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2007.11.29
2007 東京国際女子マラソン観戦記 -2007/11/18-始めに
東京国際女子マラソンは、今までは高橋尚子の大会であったと言っても過言ではないと思います。
ミレミアムのシドニーオリンピック以来日本の女子マラソンは高橋尚子を中心に回ってきていました。
渋井選手が記録を作ったときでも、野口選手がオリンピックを勝ったときでも、どこかで高橋尚子が・・・と、みんな心の中で思っていたはずです。
しかし、彼女自身シドニーオリンピックの優秀以来、青梅の30Kmをのぞいてベルリンと東京にしか走っていないんです。
もう少し言うと、2002年のベルリンマラソン以降は、東京でしか走っていない。
しかも、3度走った東京マラソンも1勝2敗の成績。
高橋尚子のブランドは勝っても負けても首都東京を走ることで保たれていたような気がします。
東京は高橋尚子のものでした。
昨年土佐礼子に敗れるまでは。
昨年の東京で高橋に勝った土佐選手は、大阪の世界陸上の結果、北京への切符を手に入れています。
残されたオリンピックへの切符は2枚。
2007年、高橋尚子は東京を走ることを拒否しました。
今年の東京国際女子マラソンは、同じくオリンピックメダリストの野口選手、渋井選手が早くから出場を公表していました。
日本人同士の対決を意識的に避けたのでしょうか?それとも、体調の問題なのでしょうか?
東京を走らない高橋尚子。申し訳ありませんが都落ちの感はぬぐえません。
はたして今年の女子マラソン。首都を征すのは誰なのか?オリンピックの切符を手中に収めることが出来るのは誰なのか?
注目の東京国際女子マラソン観戦です。
国立競技場へ
日曜日、朝10時過ぎの横浜発の湘南新宿ラインはなかなかの混雑です。
行楽のお客さんでしょうか?湘南新宿ラインの特性上、渋谷新宿から埼玉へ向かう人たちなのでしょう。
明らかに仕事の人は少ないですが、まだ午前中と言うこともあり、カップルも少なめで個人のお客さんがほとんどみたいです。
恵比寿、代々木と乗り換えて、国立競技場の最寄り駅、千駄ヶ谷に着いたのは11時過ぎ。
今日は東京体育館で空手の大会があるみたいで、駅周辺はなかなかの混雑。
沿道のイチョウが徐々に色づき始め。都会の秋景色です。
体育館を過ぎ、国立競技場の前もなかなかの人だかり。
何しろ、今日はここで北京オリンピック選考東京国際女子マラソンが開催されるわけですから、都民の興味津々と行ったところでしょうか。
国立競技場 アップする選手
東京国際女子マラソンの日、国立競技場での観戦は無料です。
そう言うことも手伝ってか、競技場前はなかなかの人出。
マラソンゲートが作られた入場口からのスロープに、スポンサーの朝日新聞が赤い応援旗を配っています。
その奥にアシックスのテントブース。去年までの巨大な高橋尚子のプレートはありません。これも高橋尚子が今大会への出場を回避したためなのか?スポンサー契約を止めたわけではないと思うのですが。
中には、野口選手と渋井選手のユニフォームとシューズが飾られています。
そう言えば創業者の鬼塚氏が亡くなられたのはついこの間。オニヅカタイガー古いスポーツ好きには懐かしい響きです。
パンフレットを500円で購入して場内へ。
観客はまぁまぁの入り。でも、やっぱり高橋尚子が走っていたときに比べると少ないなぁ。
野口や渋井では、高橋の変わりには成らないのか。確かに二人は特に野口選手は地味といわれると地味ですね。
こうして結局どこかで高橋尚子と比べている。高橋尚子の不思議な魅力の力です。
観客はいつもより少なめな国立競技場ですが、出場選手の数は変わらないみたいです。 競技場の回りもトラックもアップする選手であふれています。
トラックには、軽いランニングをする野口選手の姿が。
まるで跳ねるように、鹿かカモシカかと見間違うような野口選手のアップ。今日は本当に調子が良いみたいです。
しばらくすると、大南選手もトラックでアップ。
こちらもなかなか。事前の好調が伝えられています。
今年の4月にはロッテルダムマラソンで優勝とか。その時の調子が残っていると台風の目かもしれません。
大南選手って、どことなく市川実日子に似ている気がして、結構ファンなんです。がんばってほしいなぁ。
向こう側スタンド前では、多分渋井選手が直線でのアップ。
今日の注目選手そろい踏みです。
しかし、レース前に1時間以上もアップするんだ・・。
オイラだったらもうそれだけで・・・。まずアップの練習をしないといけない。人間の作りが違うのかなぁ?アップを見ているだけで到底同じ種類の人間とは思えません。
まして、女性。42Kmを2時間半で走る脅威の選手。勝っても負けてもそのタイムで完走するだけですごいことです。
号砲一発
アップの選手が一旦引き上げ、静まり変えたグラウンドに一般参加選手の入場です。
もの凄い数。
これだけの選手が標準記録を突破してマラソンに参加するんだ。すごいことです。
一般参加選手の整列の後、招待選手が先頭に混ざります。
野口、渋井、大南、尾崎、挽地。国内招待選手並びに外国招待選手が。
テレビ中継も始まって、手持ちのワンセグ受信機でも会場の模様を見ることが・・・。
号砲一発。一斉にとは言いづらいほどの列がスタートしていきます。
まずは招待選手が先頭に。
これから42Kmも走るとは思えないほどのスピード。
トラックを2周と1/4して場外に出て行くんですが、すでに場外に先頭が出て行くときには集団の後方を周回遅れに・・・。
一流選手のスピードを実感できます。
中抜け
選手が競技場を後にしてしまうと、後は散々です。
スタートを見物した後のお客さんがどんどんと競技場を後にします。
競技場では、電光掲示板でTV中継の模様を流してくれているので、展開が分からないと言うこともないのですが、それでも競技場にいてもすることがありません。
ということで、ワンセグテレビのイヤホンを耳に入れて、競技場の外へと・・・・。
何しろこの時期は、神宮外苑イチョウ祭りが開催されているのですから。
神宮外苑イチョウ祭りの食べまくり模様はこちらから。→「神宮外苑いちょう祭りは胃腸祭り」
イチョウの具合はこちらから。→「神宮外苑いちょう祭り -2007/11/18-」
まだまだ全然紅葉にはほど遠いイチョウを見物して、屋台で飲んで食べて。
そうこうしているうちに、大南選手が遅れて、浅井選手も置いて行かれて。
結局、野口選手とケニアのコスゲイ選手とが一騎打ちに。
ふらふらしていても何が起こっているか把握することが出来る。ワンセグって偉大だなぁ。
外苑の黄緑色のイチョウを見物して、飲んで食べて、そろそろ出発から2時間になる・・・。
それまでには競技場に戻らなければ・・・。
外苑の沿道はすでに応援の人だかりです。
ゴールその時
再び競技場に戻って・・・。競技場の入り口からグラウンドまでは、もう人が一重二重の観戦のお客さんが。
すでに選手は30Kmを過ぎたあたりを走っているはず。
ゴールまではあと1/4を残すのみです。
トイレに行って、競技場スタンドに観戦の場所を確保。
競技場トラックにはDoCoMoだけの準備も万端。
電光掲示板のTV中継はデッドヒートのレース展開。はたしてトップで競技場に戻ってくるのは・・・。
中継のテレビがCMに入る。
競技場の掲示板はTVがCMに入ると中継を止める。国立競技場という立場のためか、他の協賛企業との関係なのか?
こういう場合手持ちのワンセグテレビが活躍する。
CMと言ってもDoCoMoのCMは文字放送のようなCM。競技を中断させないための心配りを感じます。
そして、その心配りの間隙を付いて、野口スパート。
高橋尚子失速の東京の坂を野口選手はぐいぐいと登っていく。
すごい、今まで併走していたコスゲイ選手が全然付いていくことが出来ない。
あの小さな体のどこからこんなエネルギーがあるんだろう?
TVCMが明ける。
ワンセグテレビを持っていない人にとっては、スパートを始めて知ることになる。
会場は歓声と言うよりは、少し心配の模様。やはり高橋失速の坂のイメージはぬぐえないのか、まだこのスパートは半信半疑。
しかし、テレビでもはっきり分かるコスゲイとの距離。決まったのか?喜んで良いのか?
スパートはちょうど市ヶ谷の駅前あたりだろうか?
それが新宿通りに入る頃には、2位との差は決定的に。後は一人旅。
心臓破りの上り坂でまだペースが上がる野口選手のすごさ。
四谷三丁目交差点を曲がり信濃町へ。
上空を中継のヘリが舞う。TV中継も、試合は決定的のように解説を続ける。
JRを越えて外苑へ。本当に試合は決定的だ。
先ほどうろうろしていたあたりを、野口選手が脱兎のスペードで駆け抜ける。
そして、競技場へ。
わき上がる競技場。
競技場に姿を見せた野口選手。足取り軽やか。
トラックに入ってますますスピードが上がったような気がする。
トラックを一周。まるでウィニングラン。途中の42Kmにも見向きもしない。
そして、メインスタンド前の最後の直線に入ったとき、スタンドの応援団に向けてガッツポーズが。
勝利を確信?2位はまだグランドに姿も見せない。
最後の直線100mもスピードを落とすことなくゴール。
2時間21分37秒。決してコンディションが良いとは言えない今日のマラソンで、どうなの?この記録。大会新記録です。
ゴール後、マスコミに取り囲まれる野口選手。
印象が地味な選手ですから、晴れやかな姿が似合わないというと失礼かなぁ。オリンピックチャンピオンであり日本記録保持者なんだから。
でも、止まっている野口選手って小柄な体も手伝ってか本当に地味です。というか、可愛らしい女性です。
そう言う意味では、見せる走りをする選手ですねぇ。あの力強い走りはなんなんだろう?
その時、地獄の坂道で力尽き気味の渋井選手が、尾崎選手に捕らえられています。
そう言えば、高橋尚子をこの坂で抜き去ったのも尾崎選手だったなぁ。
同じ事が今、渋井選手で・・・。
野口選手のヒロインインタビュー。
その間にコスゲイ選手、ジェノベーゼ選手らがゴール。
渋井をかわした尾崎、大南、挽地・・・。
インタビュー中に競技場に戻ってきた大南選手が、その前を通り過ぎる光景が勝者と敗者の明と暗です。
敗者と言っても、入賞なわけで決して悪い記録ではないはずなのに、マラソンとはなんて残酷な競技なんだろう。
やがて、野口選手のインタビューも終わり囲み取材から解き放された野口選手の前を、疲れ切った渋井選手の重い足取り。
結局最後はこうなった。
去年のマラソン。土佐のインタビュー中に戻ってきた高橋尚子に姿が重なる。
オリンピックの切符を手中に収めた野口選手と、残念ながら夢と散った他の選手。
ほとんど年に一度しかレースに出ない人たちにとっての、4年に一度のオリンピック出場のチャンス。
改めてその狭き門を実感させられます。
高橋尚子が出ていたら・・・。今日の記録と野口選手の実力を目のあたりにさせられると、たやすく想像が付くところですが、今は言うのは止めましょう。
とりあえず、優勝の野口選手に栄冠輝くです。
表彰式
ぞくぞくと戻ってくる選手。
招待選手、一般参加選手。
ゴール後に力尽きる人、黙々と走る人。
それぞれのゴールが今ここに。永遠と続けてきた練習の成果が実を結んでいるのでしょう。
42Kmを走りきるだけで、全員に脱帽です。
選手のゴールが一段落。
やがて勝者をたたえる表彰式です。
1位 2:21:37 野口 みずき
2位 2:23:31 サリナ・コスゲイ
3位 2:27:35 ブルーナ・ジェノベーゼ
4位 2:28:39 尾崎 朱美
5位 2:30:24 大南 博美
6位 2:34:14 挽地 美香
7位 2:34:19 渋井 陽子
8位 2:34:29 ジビレ・バルシュナイテ
が、今日の結果。
ここまでが入賞でその栄光をたたえられます。
でも、本当の栄光はこの中の一人にでしかないことは、みんなが知っていることです。
ちょっと高すぎるんじゃないの、と思われる1位の台の上に(この高さの台に踏み台すら用意しない大会関係者の不手際・・・でも、この高さが栄光を象徴しているといえないことも・・・)軽々と登った野口選手。
応援に手を振る姿は本当に普通の女性です。
もう強い野口選手はここにはありません。可愛らしい女性が笑顔笑顔笑顔です。
ただ、メインスポンサーのDoCoMoの景品が娘DoCoMoだけと905iだったことに幻滅しました。
なんだよそれ・・・。
おしまい
北京オリンピック選考大会でもある東京国際女子マラソン。
優勝者は野口みずき選手でした。
そのあまりの強さに、この大会の出場を見送った高橋尚子選手の選択は賢明だったのかも知れませんが、立場はますます危うい状態です。
残す大阪、名古屋に残されたオリンピックへの切符は1枚。
スポンサーとテレビ局がらみで一発勝負を許さない日本の選考方法にはいつもながら疑問を持ちます。
話を東京国際女子マラソンに戻すと、この大会、東京マラソンとの合併が噂されています。
来年は別々に行われることが決まっていますが、東京マラソンと合弁は、はたしてそれで良いのかなぁ?
東京マラソンって、観光大会のような気がして仕方がないし、東京国際女子マラソンで起こった今までの事が全て無くなってしまいそうで・・・。
東京国際女子マラソンに参加するために、標準記録を目指して練習してきた人たちの目標が無くなってしまいそうで。
ただ、東京国際女子マラソンの悲喜を一番味わった高橋尚子選手が出場を回避する。
彼女のための彼女の大会であったはずのマラソンが、そんな大会であるのなら、無くなってしまっても仕方がないのかなぁ。
首都東京の交通を考えると、年に何回もマラソンで通行止めはやっぱり問題があるのかも知れませんし。
改めて感じたのは、マラソン選手って言うのは年に一度しかレースに出ないと言うこと。良くって2度くらいでしょうか?
1年のほとんどを練習に費やして、本番は1度きり。そこで失敗すると1年を棒にふることになってしまう。
野口選手がインタビューでマラソンが好きだと言っていたが、その好きなマラソンは2年ぶりなわけで、マラソンが好きなのか、マラソンの練習が好きなのか、一般人のオイラにとってははなはだ理解に苦しむ話です。
今、プロマラソン選手っているのかなぁ?高橋尚子選手だけでしょうか?
年に一度、2時間半のためのマラソン選手。しかも報われるのは参加者の中でただ一人。
そんな刹那なスポーツの雰囲気が好きで、毎年見に来るんですが・・・・。
最後に、野口選手のオリンピックでの活躍を期待して、今年の観戦はお終いです。
アルプスラボでの作成データです→ 「東京国際女子マラソンコースはこちらから」
国立競技場はここです
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